IBのグループ5の科目でありIB生全員が学ぶ数学。
IB数学には、数学の理論に焦点を置くMath Analysis and Approaches (以下Math AAと省略)と数学の実社会での応用に焦点を置くMath Applications and Interpretationがあります。
今回は、IB数学の中でも、Math AAの概要に関してMath AA HLで7をとった筆者が解説していきます。
IBの数学の勉強範囲
Math AAにはstandard level(標準レベル、以下SLと略)とhigher level(上級レベル、以下HLと略)の二種類があり、それぞれで勉強範囲が大きく異なります。
まず、SLで学習する範囲を見ていきましょう。
トピック | 授業時間(h) |
Number and Algebra(代数) | 19 |
Functions(関数) | 21 |
Geometry and Trigonometry(幾何と三角法) | 25 |
Statistics and Probability(統計と確率) | 27 |
Calculus(微分積分) | 28 |
Exploration(探求) | 30 |
Total(合計) | 150 |
上図のNumber and Algebra, Functions, Geometry and Trigonometry, Statistics and Probability, CalculusがSLで学習する5つの数学の分野です。
そして、ExplorationはIA(内部評価)の時間で、自分が決めたトピックに関して研究をしエッセイを書きます(内部評価に関しては別の記事で詳しく説明します)。
数学SLは、勉強する範囲としては日本の高校の文系数学(数学IA・数学IIB)と類似しています。
大きな差でいうと、SLではVector (ベクトル)やComplex number(複素数)を一切学習しないことや、SLでは日本の文系数学では習わないCalculus(微積分)の範囲を扱うことがあげられます。
次にHLで学習する範囲を見ていきます。
トピック | 授業時間(h) |
Number and Algebra(代数) | 39 |
Functions(関数) | 32 |
Geometry and Trigonometry(幾何と三角法) | 51 |
Statistics and Probability(統計と確率) | 33 |
Calculus(微分積分) | 55 |
Exploration(探求) | 30 |
Total(合計) | 240 |
HLで学習する分野としては、SLで学ぶ5つものと全く一緒です。ただ、授業時間が多いことからも分かるように、それぞれの分野をSLよりもより深く学習していきます。
HLではもちろんVectorやComplex Numbersは扱いますし、大学レベルのトピックであるDifferential Equation(微分方程式)も扱います。
こちらも日本の理系の数学(数学IA・数学IIB・数学III)とかなり似ています。
ただ、HLでは先ほどのDifferential EquationやMaclaurin Series(マクローリン展開)などの大学レベルの範囲を扱ったり、逆に確率漸化式を扱わなかったりといった差もあります。
それぞれの5分野で学ぶことの詳細を知りたい方は、以下のIBの公式のシラバスをご覧ください。
加えてIB数学の大きな特徴として、試験で関数電卓が使用できたり公式集を見れることがあります。
関数電卓はとても高性能で、統計の問題などで多くの計算を瞬時にしてくれます。
そのため、IB数学では生徒の計算する能力や公式を覚えているかよりも解法を考える力やその中での論理的思考力などに焦点を置いていると言えます。
IBの数学の評価項目
次にIB数学での成績でどのように成績がつくかに関して説明していきます。これもSLとHLで異なります。
評価項目 | 内容 | 時間 (h) | 成績における比重(%) |
外部評価 | |||
Paper1 | 二つのセクションがあり、一つ目で短答式の問題、二つ目でより長い文章題が出される。(電卓使用不可) | 1.5(SL)2(HL) | 40 (SL)30(HL) |
Paper2 | 二つのセクションがあり、一つ目で短答式の問題、二つ目でより長い文章題が出される。(電卓使用可能) | 1.5(SL)2(HL) | 40(SL)30(HL) |
Paper3(HLのみ) | 学習したことのない概念に関する問題が2題与えられる。(電卓使用可能) | 1 | 20 |
内部評価(IA) | |||
数学的探求 | 自分が興味のある数学の分野に関してリサーチをしエッセイを書く。 | 15 | 20 |
上の図からもわかるように、Paper1とPaper2はSL、HLで共通の評価項目です。
この二つの試験は、どちらかというと日本のカリキュラムで扱うような問題を解きます。
そのため中学まで日本の数学を勉強してきた生徒にはかなり対策がしやすいといえます。
ただPaper2に関しては電卓を使って問題を解くため、概念の理解に加えて電卓をどう効果的に使うかも習得していなければなりません。
IB数学において最も対策しづらいのはやはりPaper3です。
学習したことのない概念というのは例えば、2021年の11月試験では、双曲線関数(ハイパーボリックコサインなど)というシラバスに載っていない概念に関する問題が出されました。
Paper3においては、学習していない概念に関して問題を解く中で理解を深めていくことがゴールとなっています。
Paper3では何が出題されるか予測できないため、概念を深く理解し、どんな問題に対しても柔軟に問題解決できる数学力が必要になるといえます。
IB数学の難易度
最後にIB数学と日本の高校数学を比較した時の試験の難易度に関して説明していきます。
まず数学SLは間違いなく日本の文系数学よりも簡単であるといえます。これには主に二つの理由があります。
一つ目は数学SLの勉強範囲の方が日本の文系数学よりも簡単であるためです。
二つの範囲は類似していますが、SLではベクトルや複素数、数学的帰納法など数学の中でも複雑で難しい概念を一切扱わないため、結果的により容易に学習できます。
またSLのPaper1、Paper2で出題される問題は標準的なものが多く、それほど複雑でないためしっかり対策をすれば高得点を狙いやすいでしょう。
次にHLに関してですが、これも日本の理系数学よりも簡単だといえます。
確かに勉強範囲に関しては、数学のHLでは大学レベルのものを扱ったりします。しかし試験で出題される問題を見てみると、SL同様そこまで難解なものは出題されないため高得点が取りやすいです。
Paper3は日本の高校数学のスタイルと大きく異なるものではありますが、これも概念をしっかり理解していれば問題自体は十分解けるレベルのものです。
そのため、全体としてHLの方が難易度は優しいといえます。